皮膚科の豆知識ブログ

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うっ滞性脂肪織炎/著書「誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた」の補足説明④

拙著「誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた」には、いくつかわかりにくい部分があったようです。

そこで、読者の疑問に対してここで解答していきたいと思います。

前回は蜂窩織炎の診断について解説しました。

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今回はそのつづきとして、静脈うっ滞性脂肪織炎についてもう少し詳しく解説します。

 

うっ滞性症候群とは

 

下肢の静脈は血液を心臓へ返すために2つの機能を持っています。

 

  • 下肢の筋肉によるポンプ作用
  • 静脈弁

 

ところが筋肉のポンプ作用が落ちたり、弁の機能が悪くなったりしたら、静脈内に血液がたまり、静脈の壁にかかる圧力(静脈圧)が高くなってしまいます。

そのような高静脈圧に伴う症状を「静脈うっ滞性症候群(うっ滞性症候群)」と呼び、主に3つの病態に分類されています。

 

うっ滞性症候群

  1. うっ滞性皮膚炎(表皮の炎症)
  2. うっ滞性脂肪織炎(皮下組織の炎症)
  3. うっ滞性潰瘍

 

それぞれについて説明していきます。

 

うっ滞性症候群の3つの病態

①うっ滞性皮膚炎

高静脈圧によって真皮上層の毛細血管が傷害され、酸素や栄養の拡散が行われなくなります。

そのため組織が虚血状態になり、皮膚のバリア機能が破綻してしまいます。

その結果、外来刺激に対する反応性が高まり湿疹病変を形成します。

 

②うっ滞性脂肪織炎

高静脈圧によって皮下組織を走行している皮静脈に静脈周囲炎が引き起こされます。

それに加えて脂肪組織の血行障害により脂肪細胞が壊死し、皮下組織の炎症が起こります。

 

③うっ滞性潰瘍

①と②を慢性的に繰り返すことにより皮膚の線維化が引き起こされ、組織の栄養状態が障害されてしまいます。

この状態に軽微な外傷が加わると創傷が治癒せず、難治性の潰瘍を形成します。

 

うっ滞性脂肪織炎について

 

うっ滞性脂肪織炎にはいくつかの病名があり、脂肪皮膚硬化症、硬化性脂肪織炎とも呼ばれます。

 

  • うっ滞性脂肪織炎(stasis panniculitis)
  • 脂肪皮膚硬化症(lipodermatosclerosis)
  • 硬化性脂肪織炎(sclerosing panniculitis)

 

片側性と両側性の頻度は同じくらいで(片側性55%、両側性45%)、片側性の場合は蜂窩織炎、両側性の場合は自己免疫疾患(結節性紅斑、血管炎)との鑑別が重要です。

J Am Acad Dermatol. 46(2): 187, 2002、PMID: 11807428

 

そしてうっ滞性皮膚炎を疑う場合は、診断と原因精査を同時に行っていく必要があります。

 

診断

まず診断ですが、皮膚生検で確定診断を行います。

多発例では自己免疫疾患との鑑別が重要になるため、積極的に皮膚生検を行う必要があるでしょう。

ただ硬結部を生検すると傷が治りにくいことが多いため、片側性の典型例ではまず原因の精査を優先し臨床診断となる場合もあります。

 

原因精査

高静脈圧の原因は静脈不全とそれ以外に分類されます。静脈不全の有無を確認するためにまず超音波検査を行います。

 

静脈不全:弁不全、深部静脈血栓症など

静脈不全以外:筋ポンプ機能低下、立ち仕事、肥満、薬剤性など

 

下肢静脈エコーで異常が認められた症例は68%と報告されており、32%はそれ以外の原因になります。

具体的には加齢に伴う筋ポンプ機能低下や、長時間の立位の仕事などの生活習慣が原因と考えられています。

また患者の66%が肥満であったとされており、高度肥満も静脈血の灌流を阻害するようです。

さらに薬剤性浮腫が原因と考えられる症例も報告されていて、内服薬の確認も重要と思われます。

 

治療

治療としては弾性包帯や弾性ストッキングの着用、立ち仕事の中止や体重の減量などの生活指導が必要になります。

治療適応の弁不全があれば手術で高静脈圧を改善できますが、そのようなケースはあまり多くはありません。

 

つづく

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