皮膚科の豆知識ブログ

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ステロイドと保湿剤を混合したらどうなる(保湿効果)

ステロイド外用薬と保湿剤を併用することで、症状をより改善することができる可能性があります。

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そこでステロイド外用薬と保湿剤の混合が行われます。

 

しかし混合して薄まっても効果は維持されるのでしょうか。

今回は保湿効果について考えてみます。

 

論文を見てみましょう。

薬学雑誌. 137(6), 763-766, 2017(NAID: 130005685940)

 

健常人14人の前腕に人工的に乾燥皮膚を形成し、保湿剤(ヒルドイドソフト)と混合剤(ヒルドイドソフト+ワセリン)をそれぞれ外用しました。

1日2回の外用を2週間行い、角質水分量の指標となる電気伝導度が測定されています。

 

結果ですが、以下のようにヒルドイドソフトは混合すると保湿効果が低下してしまうようです。

電気伝導度(角層水分量)増加量(2週間後)

・ヒルドイドソフト希釈なし:66.3ms
・ヒルドイドソフト2倍希釈:30.5ms
(p<0.05)

つまり保湿効果を重視するなら、保湿剤は混合せずに使用したほうがよさそうです。

 

ただ朝ステロイド、夜保湿剤など、別々に使用するのは手間がかかります。

面倒になって塗らなくなるよりは、効果は下がっても混合して使用したほうがよい…という考え方もあるかもしれません。

 

【書籍の復習用】国試解説:第9回

前回に引き続き書籍の内容をもとにして国家試験の問題を解説していきます。

 

今回は第4章の内容になります。

 

【問題】

以下の表面がツルツルで周囲との境界が不明瞭な紅斑をみたとき、注目すべきポイントは何でしょう。

(112-E28)

国試問題文(抜粋)

43歳の男性.足の痛みを主訴に来院した.左足の第一中足趾節関節に熱感と圧痛とを認める.

 

【解説】

答え:皮疹の部位(関節部)

 

紅斑の表面の変化がなくツルツルしている場合は、病変は真皮以下に存在しています。

そして皮下組織に病変がある場合は境界が不明瞭になります。

この症例は境界が不明瞭なので、病変は皮下組織にあるようです。

 

単発の場合はまず感染症(蜂窩織炎)を疑います。

ですが関節部に病変がある場合は急性関節炎(痛風、偽痛風)の可能性も忘れてはいけません。

可動域制限、可動時痛があるかどうかを確認するのがよいでしょう。

答えは痛風発作です。

意外と皮膚科を受診することもあるので間違わないようにしたいですね。

 

【書籍の復習用】国試解説:第8回

前回に引き続き書籍の内容をもとにして国家試験の問題を解説していきます。

 

今回は第4章の内容になります。

 

【問題】

以下の紅斑をみたとき、注目すべき2つのポイントは何でしょう。

(110-I79)

国試問題文(抜粋)

45歳の男性.1週前から多発関節痛と両側の下肢の皮疹とが出現した.体温37.6℃.

 

【解説】

答え:①表面の性状、②周囲との境界

 

紅斑を見たときに最初に注目するのは表面の性状です。

表面の変化がなくツルツルしている場合は、病変は真皮以下に存在しています。

浅い部位(真皮)に病変がある場合は境界が明瞭で、深い部位(皮下組織)に病変がある場合は境界が不明瞭になります。

この症例は境界が不明瞭なので、病変は皮下組織にあるようです。

 

その場合は感染症、循環障害、自己免疫疾患の3つを考えます(関節部に病変がある場合は急性関節炎も鑑別に挙がる)。

これらの鑑別点は病変の分布です。

多発している場合は感染症(蜂窩織炎)の可能性は低く、循環障害と自己免疫を考えます。

見た目では鑑別はできず、確定診断には皮膚生検が必要です。

ただ関節痛があるので自己免疫疾患(結節性紅斑、中型血管炎)の可能性が高そうです。

 

つづく

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【書籍の復習用】国試解説:第7回

前回に引き続き書籍の内容をもとにして国家試験の問題を解説していきます。

 

今回は第3章の内容になります。

 

【問題】

以下の24時間以上持続する紅斑をみたとき、まず確認するのは何でしょう。

(108-A51)

国試問題文(抜粋)

60歳の男性.発熱と全身の皮疹を主訴に来院した.15日前に山へ山菜採りに行った.5日前から発熱があり,3日前から全身に皮疹が出現していた.体温39.5℃.右下腿には黒褐色の痂皮が付着した紅斑を認める.

 

【解説】

答え:薬歴

 

表面の変化がなく境界明瞭な紅斑なので、病変は真皮にあるようです。

この場合は蕁麻疹と中毒疹を考えます。

蕁麻疹と中毒疹の鑑別点は皮疹の持続時間です。

24時間以上持続する場合は中毒疹と診断します。

 

中毒疹は薬疹、感染症、膠原病の可能性がありますが見た目では鑑別できません。

そこでまず薬歴に注目します。

この症例は内服薬剤はなく、感染症と膠原病に絞られます。

その場合の診断は非常に困難です。

 

感染症ではウイルス(麻疹、風疹、伝染性単核球症など)、リケッチア(ツツガムシ病、日本紅斑熱)、スピロヘータ(梅毒)などを考える必要があります。

また膠原病では成人スティル病、SLE、皮膚筋炎、水疱性類天疱瘡の初期などの鑑別が必要です。

診断がつかないことも多々あります。

 

この症例は野山に行ったという行動歴から刺し口を見つけてツツガムシ病と診断されたようですが、診断はなかなか難しいと思います。

 

つづく

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【書籍の復習用】国試解説:第6回

前回に引き続き書籍の内容をもとにして国家試験の問題を解説していきます。

 

今回は第3章の内容になります。

 

【問題】

以下の24時間以上持続する紅斑をみたとき、まず確認するのは何でしょう。

(102A-33)

国試問題文(抜粋)

70歳の女性.5日前に頭痛と咽頭痛とが生じたため,感冒薬を内服した.
3日前から発熱,関節痛,結膜充血,口腔内びらんに加えて,顔面,体幹および四肢に紅色皮疹が出現した.

 

【解説】

答え:薬歴

 

表面の変化がなく境界明瞭な紅斑なので、病変は真皮にあるようです。

この場合は蕁麻疹と中毒疹を考えます。

 

蕁麻疹と中毒疹の鑑別点は皮疹の持続時間です。

24時間以上持続する場合は中毒疹と診断します。

中毒疹は薬疹、感染症、膠原病の可能性がありますが見た目では鑑別できません。

そこでまず薬歴に注目します。

 

薬歴がなければ感染症と膠原病に絞られますが、この症例は感冒薬を内服しているようです。

まず薬疹を考えて薬剤を中止します。

 

ちなみに薬疹は重症薬疹の鑑別が重要です。

通常の薬疹は原因薬剤の中止で治癒しますが、重症薬疹はステロイドの全身投与が必要です。

重要な鑑別点は発熱と粘膜病変です。

この症例は発熱と粘膜病変があり、重症薬疹(スティーブンスジョンソン症候群)のようです。

ステロイドの全身投与が必要になります。

つづく

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