皮膚科の豆知識ブログ

日々の小さな疑問を解決する論文を紹介。講演、お仕事の依頼は「お問い合わせ」からお願いします。

2021-01-01から1年間の記事一覧

帯状疱疹の痛みが消えるまでどれくらいかかる?

帯状疱疹は皮膚症状が治癒した後も痛みが残ることが多いです。 それでは、どれくらいの期間痛みが続くのでしょうか。 論文を見てみましょう。 まず帯状疱疹患者316名に抗ウイルス薬を投与後、6ヶ月間フォローした研究です。 Int J Clin Pract. 61(7): 1223, …

帯状疱疹の再発率はどれくらい?

帯状疱疹になるのは一生に1回と言われています。 ところが一部で2回以上発症する人がいるようです。 それでは帯状疱疹が2回以上発症する割合はどれくらいなのでしょうか。 帯状疱疹に関する文献を集積したシステマティックレビューを見てみましょう。 BMJ Op…

論文からみた凍結療法の具体的方法

ウイルス性疣贅の治療では凍結療法が行われます。 しかし教科書には具体的な方法は書かれていません。 そこで論文から凍結療法について考えてみたいと思います。 接触時間 接触回数 凍結前の処置 凍結療法の注意 接触時間 まず液体窒素の接触時間の目安です…

凍結療法の治療間隔はどれくらい?

イボの治療では凍結療法が行われます。 保険では月4回まで(週1回)の治療が認められていますが、治療間隔はどれくらいがよいのでしょうか。 まず日本の皮膚科医へのアンケートを見てみましょう。開業医と勤務医で治療間隔が異なるようです。 臨床医薬 28(11…

イボの凍結療法の治療効果はどれくらい?

イボの治療では凍結療法が行われます。 凍結療法にはどれくらいの効果があるのでしょうか。 まず古いですが手のイボに関する論文を紹介します。 Br J Dermatol. 94(6): 667, 1976 PMID: 820365 治癒するまでの治療回数:平均3.1回 6回の治療で83%の患者が治…

凍結療法以外のイボの治療法は?

足底のイボは難治です。 第一選択の凍結療法が効かなかったときは、どんな治療法があるのでしょうか。 皮膚科医へのアンケート調査を見てみましょう。 Visual Dermatology 9(3): 272, 2010 【第二選択の治療法】 1 活性化ビタミンD3外用:37%2 ヨクイニンエ…

水イボはいつ消えるのか?

水いぼ(伝染性軟属腫)は自然治癒することが知られています。 そのため無治療で経過観察することも選択肢の一つです。 それでは治癒するまでにどれくらいの時間がかかるのでしょうか。 いくつかの論文を見てみましょう。 217人の軟属腫患者を経過観察した日…

軟属腫摘除の有効率はどれくらい?

水いぼ(伝染性軟属腫)治療の第一選択は摘除です。 それでは摘除にはどれくらいの効果があるのでしょうか。 軟属腫摘除に関する1879人の後方研究を見てみましょう。 Pediatr Dermatol. 33(6): 640, 2016 PMID: 27601304 ・1回で治癒(再発なし):70%・2回…

水イボの痛くない治療は?

水いぼ(伝染性軟属腫)に対しては摘除が有効ですが、痛みや出血を伴うのが欠点です。 子供に多い疾患なので苦労します。 他に痛くない治療法はないのでしょうか。 皮膚科医へのアンケートによると、摘除以外にも様々な治療が行われているようです。 日本臨…

伝染性単核球症の皮疹は薬剤を投与しなくても出る

伝染性単核球症の皮疹はアンピシリン疹が有名です。 かつてはペニシリン系抗菌薬の投与で100%近く皮疹が出るとされていました。 しかし現在ではもっと頻度は低いと言われています。 実際の頻度がどれくらいなのか、伝染性単核球症の後方研究を見てみましょう…

伝染性単核球症の原因ウイルスは何?

ときどき伝染性単核球症を疑う症例に出会うことがあります。 しかしEBウイルス抗体が既感染パターンで、診断に苦慮することも多い印象です。 実は伝染性単核球症の原因はEBウイルスだけではありません。 それではどのようなウイルスが原因になるのでしょうか…

ジアノッティ症候群の原因ウイルスは何?

Paraviral Eruptionと呼ばれる、様々なウイルス感染で生じる皮膚疾患があります。 Dermatology 211: 309, 2005 【Paraviral Eruption】 1. ジアノッティ症候群2. ジベルばら色粃糠疹3. gloves and socks症候群4. asymmetric periflexural exanthem5. eruptiv…

ジアノッティ症候群を診断する方法

ジアノッティ症候群は様々なウイルスが原因で起こります。 そのため確定診断ができる検査がなく、患者への説明が中途半端になりがちです。 また治療法がなく、治癒までに時間もかかることも問題です。 そこで海外から報告されている診断基準が役に立ちます。…

成人パルボウイルス感染症を診断する方法

成人のパルボウイルス感染症に出会うことは意外と多いです。 そのほとんどが「あるかないか分からないくらいの皮疹と手足の腫れ、倦怠感」という症状。 臨床症状がパッとしないため、診断が難しい疾患です。 リウマチ因子や抗核抗体が陽性化することも、診断…

IgMが陽性化するのはいつ?(ウイルス抗体検査の疑問①)

ウイルス感染症を疑う場合、抗体検査をオーダーします。 そして以下のいずれかがあれば感染を証明することができます。 IgM抗体陽性 ペア血清で抗体値の有意な上昇 しかし結果を見て悩んでしまうことも多いのが実状です。 今回はIgM抗体について考えてみます…

ペア血清の有意な上昇は2倍?4倍?(ウイルス抗体検査の疑問②)

ウイルス感染症を疑う場合、抗体検査をオーダーします。 そして以下のいずれかがあれば感染を証明することができます。 IgM抗体陽性 ペア血清で抗体値の有意な上昇 しかし結果を見て悩んでしまうことも多いのが実状です。 今回はIgGについて考えてみます。 I…

皮膚真菌症の原因菌は何が多い?

内臓や血液の真菌感染症(深在性真菌症)はカンジダやアスペルギルスが多いと言われています。 それでは皮膚真菌症の原因菌は何が多いのでしょうか。 論文を見てみましょう。 Med Mycol J. 60(3): 75, 2019 PMID: 31474694 皮膚科を受診した皮膚真菌症患者67…

白癬は視診で診断するべからず

皮膚真菌症は見た目だけで診断できるのでしょうか。 それを調べた報告があります。 Fam Pract. 16(6): 611, 1999 PMID: 10625138 皮膚科クリニックを受診した紅斑を有する患者148人に対して臨床診断を行った後に、真菌培養が行われました。 視診による皮膚真…

自覚症状がない足白癬に注意しよう

皮膚真菌症診療ガイドライン2019によると、人口の約20%程度(2500万人)が足白癬に罹患しているそうです。 しかし足白癬はある程度まで菌が増殖しないと、痒みなどの自覚症状が出てきません。 それでは足白癬と気がつかずに放置している患者はどれくらいいる…

足白癬の予防法

白癬菌はどこにいて、どうやって感染するかを聞かれることも多いと思います。 皮膚に付着した白癬菌は、一定の湿度(85%以上)があれば24時間かけて皮膚内に侵入し、感染が成立します。 水虫が足の指の間にできやすいのは、湿度が高いことが理由です。 それ…

足白癬の治療はいつまで続けるのか?

白癬にはどれくらいの治療期間が必要なのでしょうか。 ゼフナートクリームの臨床試験の論文を紹介します。 体部白癬患者61人と足白癬患者137人がゼフナートクリーム外用(1日1回)で治療されました。 西日本皮膚科 55(4):759, 1993 NAID: 130004830924 【症…

足白癬の内服抗真菌薬はどれを選ぶか?

足白癬に対して保険適応がある内服抗真菌薬には、テルビナフィン(ラミシール)とイトラコナゾール(イトリゾール)の2種類があります。 テルビナフィン(ラミシール) イトラコナゾール(イトリゾール) どちらを選択すればよいのでしょうか。 まず両者の効…

小児の内服抗真菌薬の投与量

小児の皮膚真菌症に対して内服抗真菌薬が必要になることがあります。 それは頭部白癬の治療のときです。 ところが投与量は日本のガイドラインには記載がなく、論文を参考に決める必要があります。 ある論文(臨床皮膚科. 64(13): 1060, 2010)ではテルビナフ…

皮膚真菌症に内服抗真菌薬を使うシチュエーションは?

抗真菌薬内服が必要な白癬は爪白癬が代表的です。 真菌は爪の下にいますが、外用薬が爪を通過できないからです。 しかし内服薬は、その他の白癬にも適応があります。 ガイドラインから内服薬の適応をみてみましょう。 皮膚真菌症診療ガイドライン 2019 【内…

爪白癬は見た目で診断するべからず

爪白癬では爪の変形が起こります。 ただし爪の変形が必ずしも爪白癬とは限らないことに注意が必要です。 それでは爪白癬の割合はどれくらいなのでしょうか。 皮膚科クリニック受診者の爪を観察した報告を見てみましょう。 Int J Dermatol. 36(10): 783, 1997…

爪白癬の治療は内服か外用か?

これまで爪白癬には外用薬が効かないので、内服薬を使用する必要がありました。 ところが最近爪白癬に効果がある外用薬が発売され、内服薬を使用しないケースが増えています。 それでは外用薬の効果はいったいどれくらいなのでしょうか。 臨床試験の結果を見…

【医師国家試験皮膚科領域⑦】臨床で役立つ解説-感染症の皮疹

前回に引き続き、医師国家試験に出題された皮膚疾患の写真から、皮膚科診断について説明していきます。 第1回で紅斑のみかたの原則を紹介しました。 (第1回はこちら>>医師国家試験皮膚科領域①) ・表面がザラザラ:表皮の病変 ・表面がツルツル:真皮の病変 …

【医師国家試験皮膚科領域⑥】臨床で役立つ解説-乾癬と日光角化症

前回に引き続き、医師国家試験に出題された皮膚疾患の写真から、皮膚科診断について説明していきます。 第1回で紅斑のみかたの原則を解説しました。 (第1回はこちら>>医師国家試験皮膚科領域①) ・表面がザラザラ:表皮の病変(湿疹) ・表面がツルツル:真…

【医師国家試験皮膚科領域⑤】臨床で役立つ解説-皮膚真菌症

前回に引き続き、医師国家試験に出題された皮膚疾患の写真から、皮膚科診断について説明していきます。 第1回で紅斑のみかたの原則を解説しました。 (第1回はこちら>>医師国家試験皮膚科領域①) ・表面がザラザラ:表皮の病変(湿疹) ・表面がツルツル:真…

【医師国家試験皮膚科領域④】臨床で役立つ解説-膠原病

前回に引き続き、医師国家試験に出題された皮膚疾患の写真から、皮膚科診断について説明していきます。 第1回で紅斑のみかたの原則を解説しました。 (第1回はこちら>>医師国家試験皮膚科領域①) ・表面がザラザラ:表皮の病変(湿疹) ・表面がツルツル:真…